電子書籍(Kindle)と音声素材(Audible)を使って、読書と英語学習を堪能するテクニック

はじめに

私は読書が何よりの趣味で、暇があれば本を読んでいます。

読書好きには、乱読派と熟読派の、大きく二種類のタイプがあると思っています。

私は熟読派というか、牛の反芻のように、同じ本を何度も何度も読み返すタイプです。

ここでは、私と同じ熟読派の方に、本を楽しむ片手間に英語の勉強もしてしまうテクニックをご紹介できればと思います。

これは合理的な英語学習方法ではありません。

効率が悪く、試験対策という意味での即効性はありません。

あくまで主目的は読書、しかも同じ本を何度も読んで楽しむことにポイントを置きつつ、それにかこつけて英語(私の場合は仏語も)の勉強も兼ねてしまう方法という程度のものとご理解ください。

ただ、同じ内容を日英両語、または日英仏3か国語で繰り返し脳内にインプットすることにより、筆者の意図がより明確に理解できますし、日本語で気に入ったフレーズを英語やフランス語では何と表現するのかを知ることができ、各国語での表現比較が可能になるという意味で、知的好奇心を満たすことができます。

話を簡単にするため、今回は英語がオリジナルの書籍を、日英両語で楽しむ方法を中心にご紹介します。

読書と英語を堪能するテクニック

準備するもの

準備するものは、以下のとおりです。

〇書籍の英語オリジナル(可能であれば電子書籍)

〇書籍の日本語翻訳(可能であれば電子書籍)

〇書籍の英語オリジナルの音声素材(audible化されたもの)

〇書籍の日本語翻訳の音声素材(audible化されたもの)

同じ書籍を4種類も購入するのか、無駄ではないかと思われた方もいらっしゃるかと思います。

そのとおり、無駄です。

特にマニュアル的な書籍や、ビジネス本など、一度読んでノウハウを吸収してしまったら、おそらく二度と開かないような書籍の場合は、何度も繰り返し読むインセンティブも強くないかと想像しますので、止めた方がよいかも知れません。

私は歴史書や人類史のような社会学系の大著が好きなので、そのような作品を選んでいます。

文学作品がお好きな方の場合には、お気に入りの作家の作品であれば、繰り返し読まれる方も多いかと思いますので、対象となるかと思います。

楽しみ方

特に難しいルールはありませんが、私の楽しみ方をおすそ分けさせていただきます。

日本語の翻訳書を精読する

反芻するに際して、本の内容を正しく理解することが一番重要なので、私はまず、日本語の翻訳書をじっくりと精読します。

別に暗記をする必要はありませんが、書いてある内容をしっかり理解できるように、じっくりと読み込むことにしています。

仮に分からない単語や表現などがある場合には、ネットで検索して確認することにしています(日本語の場合、このようなケースはまれですが。)。

そのために、ペーパーの書籍よりは、kindleなどの電子書籍の方が汎用性が高いように思います。

英語のオリジナルを読む。

日本語を読んでおおよその内容を頭に入れた後で、英語のオリジナルの書籍を読むことにしています。

ここで注意すべきは、必要以上に精読しないことです。

それなりに難解な社会科学の書籍は、使われている語彙数も多く、知らない単語に遭遇するたびに立ち止まって調べていたら、おそらく内容に高い関心があったとしても、最後まで読み進めることを躊躇してしまうかもしれません。

日本語で大まかの流れは頭に入っていますので、サラサラと流しながら読むだけで十分、どうしてもディーテールを確認したいときは、英語にのめりこむのではなくて、日本語の翻訳の該当箇所を確認することで、内容の理解を得るのが合理的かと思います。

ここで一番大切なのは、英語の状態のまま最後まで一度通しで読んでしまうことです。

英語のaudibleを聴く。

英語の書籍を読み終わったら、次は同じ作品をaudibleで聞き流します。

机に座って集中して聞く必要はありません。書籍と違って別の行動をしながらでも、audibleは聴き続けることが可能です。

通勤や通学の途中、家事や子育ての合間に、流しながら聴いていく、これが重要です。

それじゃあ、意味が分からないだろう、とのお叱りを受けそうですね。

はい、分かりません。

特に、ディテールについては、聞き取れなかったり、うまく意味をとれないことも多いです。

しかし、日本語で意味を把握し、かつ、一度英語の文章に目を触れさせてあるので、自分でも驚くようなタイミングと頻度で、フレーズがパッと頭の中に入ってきます。

イメージとしては、大まかな内容を承知している書籍のポイントの部分だけ、音声が聞き取れるイメージでしょうか。

重要なのは、あくまでも聞き流すことです。

ここで音声を止めて、分からないところを繰り返しリピートするとか始めると、ドツボにはまるので絶対に止めましょう。

とにかく流しながら、たまに理解できるフレーズや単語に喜びを感じながら、英語の音の流れに耳を傾けていく、という感じです。

流し聴きでも、理解できない音声の連続を聴き続けるのは結構な集中力を必要とします。

また、相当な疲労を聴く人に与えることにもなります。

そのため、無理をする必要はまったくありません。特に通勤や通学の帰り、子育てで消耗した後などは、聴くのは止めましょう。ただの苦痛のなってしまうので。

もう一度、スピードを落として英語のaudibleを聴く。

Audibleを聴き終わったら、もう一度同じ書籍の音声素材を聴きます。

ただし、今回は再生スピードを0.8倍とか0.9倍とかに減速させます。

声が変わってちょっと気持ち悪いですが、そこはご愛敬。

音声で2回目、内容面では4回目になりますので、きっと想像以上に聞き取れる自分に驚かれるかと思います。

人間不思議なもので、少しでも聴き取れるという感触が得られると、聴くのが楽しくなり集中力が持続するものです。

こうやって、2回目の音声素材を楽しみます。

ここでも再生を止めて単語を確認したり、書籍本体に戻って確認したりなどする必要はありません。

とにかく、流して聞いていくと、最初のaudibleを聴いたときよりもはるかに多くの情報を英語として理解していることに気が付くかと思います。

日本語のaudibleを聴く。

最後に、日本語でaudibleを楽しみます。

ここでも精聴する必要はありません。日本語ですし、聞き流していても、相当程度の内容が自然と頭に入ってきます。

時間がない方などは、例えば1.2倍速とかにして聴いても良いかもしれません。

不思議なのですが、最初に日本語で精読したつもりでも、audibleを聴きながら、改めて、ああそういう意味だったのかとか、こういうことが言いたかったんだ、と気づくことが多いです。

また、そういう気づきを得られるのが、精読派、熟読派としては堪らない喜びでもあります。

その後はご自由に、ご自身のテンポで楽しみましょう。

その後の楽しみ方は、それぞれのご自由に。

私は、日本語のaudibleを聴いた後は、別の作品を挟みながら、英語のaudibleを5回、10回と繰り返し聞いていくスタイルを取っています。

さすがに10回も繰り返し聞くと、自分の好きなフレーズなどは、暗記するつもりがなくとも、キチンと頭に入ってきますし、英語を聴きながら、内容に関する思考を巡らしている自分に気が付くことがあります。

また、この頃になると、書籍が読者に提示してくれている考え方や視点も、自分のものであるかのように、自分の思考の中に馴染んできていますので、本当の意味で、筆者の意図を理解できたという心境に至ることになります。

そうなると、自分なりの言葉で筆者の考えを再構成したり、概念について他者に説明したりもできるようになります。

対象の書籍を、文字通り味わい尽くした、となるのではないでしょうか。

オススメ作品

最初に書いたとおり、ご自身の好きなジャンルや作品を選ぶのが一番重要です。

ただ、同じように試してみたいけど、特に気になる作品がないとか、私がどんな作品で反芻読書しているのか、野次馬的に関心があるという方のために、数名の著者ごとに数冊ご紹介します。

どれも、国際的な評価が確立した著名な作品ばかりですので、いずれの書籍も自信をもって推薦させていただきます。

〇「サピエンス全史」(上下巻)(著者:ユヴァル・ノア・ハラリ)

〇「ホモ・デウス」(上下巻)(著者:ユヴァル・ノア・ハラリ)

〇「銃・病原菌・鉄」(上下巻)(著者:ジャレド・ダイアモンド)

〇「危機と人類」(上下巻)(著者:ジャレド・ダイアモンド)

〇「これからの「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学」(著者:マイケル・サンデル)

〇「実力も運のうち 能力主義は正義か?」(著者:マイケル・サンデル)

〇「21世紀の資本」(著者:トマ・ピケティ)

おわりに

いかがでしたでしょうか。

英語を効率的に学ぶという観点からは、まったくお勧めできない勉強方法ですが、読書を主眼としながら、英語学習の要素も付け加え、原文を味わうという観点から、一つのアプローチをご提案してみました。

もし、ご興味がわいたら、一度試してみてください。

そして、感想を教えていただけると嬉しいです。

なお、最初にも書きましたが、私は日英仏の3か国語でこのサイクルを回しています。残念ながら、マイケル・サンデル教授の著書のフランス語版audibleはないのですが、それ以外は入手できますので、これらの書籍を活字と音声を通じて、様々な言語で味わうという最高の贅沢をしています。